心臓血管外科の手術は、生命に直ちにかかわるため、手術適応の判断や、術前の全身検査、評価には細心の注意が必要です。心臓血管外科だけでなく、循環器内科をはじめとする病院内の各科の医師と連携し、近隣の自治医科大学附属さいたま医療センターとも協力して、患者さん1人1人にとって最適と思われる治療を行っています。
そして、納得した治療法を患者さんご自身に決定していただくことを基本方針としています。
心臓の筋肉に血液を供給する冠動脈がつまったり、狭くなっている場合に、体の別の部位から採取した血管(グラフト)を用いてバイパス行い、心臓の血流を改善します。当院では、脳梗塞などの合併症をできるだけ少なくするため、心臓を止めずに手術を行う「オフポンプ冠動脈バイパス術」を積極的に行っています。
大動脈弁・僧帽弁・三尖弁などに機能不全がある場合、人工弁で置き換える「弁置換術」や、自分の弁を残して修復する「形成術」を行います。機械弁に置換後は生涯ワーファリンという血栓を予防する薬の内服が必要です。そのため、年齢が比較的若い僧帽弁閉鎖不全症の方には、ワーファリンが必要ない弁形成術を第一選択として手術を行っています。
また、従来の手術より小さな傷ですみ、痛みが少なく、回復が早い低侵襲小切開心臓手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery: MICS)も積極的に行っています。僧帽弁、三尖弁手術は、内視鏡を用いて右小開胸アプローチによる方法で、大動脈弁手術は、右わきの下を切開する右小開胸腋窩切開アプローチという方法か、胸骨を部分的に切開する胸骨部分切開という方法で手術を行っています。
2017年6月にTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)の認定を受け、8月からスタートしました。それにより、高齢の方の大動脈弁狭窄症には、開胸手術ではなく、足のつけねの血管から大動脈弁を移植する方法が可能になりました。順調に経過すると、術後3日から4日で退院できます。
心房細動などの不整脈は、左心房の一部である左心耳というところに血栓ができやすくなります。その血栓が原因で脳梗塞を発症することが知られています。もっとも血栓ができやすい左心耳を切除することで、脳梗塞を予防することができます。当院では、左心耳の切除を、内視鏡で見ながら医療用のステープラを用いて行っています。長年心房細動が続いている方、カテーテルアブレーション手術を受けても治癒しない方で、抗凝固療法が難しい方が対象になります。
胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤は、動脈が異常に拡張した状態で、そのままにすると破裂の危険性があるため人工血管置換術を行います。なお、低侵襲治療として注目されているステントグラフト手術も行っています。ステントグラフト手術は全身麻酔で行いますが、術後は、その日から歩くことができます。
また、大動脈に突然亀裂が入って裂けてしまう急性大動脈解離という病気の多くは、緊急手術が必要になります。当院では、緊急手術にも対応しており、24時間365日いつでも手術が行えるよう努めています。
下肢の動脈が狭くなったり、つまったりして足が痛くなる閉塞性動脈硬化症にはバイパス手術を行います。当院では膝下の血管に対してもバイパス術を行っています。
また、下肢静脈瘤に対して、血管内焼灼術(ラジオ波治療)を導入しました。局所麻酔で行い、手術当日から歩行が可能です。日帰り手術も行っていますので、ご希望の方はぜひご相談ください。
手術実績 2018年 (2018年1月〜2018年12月)総手術件468例
さいたま赤十字病院の心臓血管外科では数多くの症例を治療してまいりました。
外来を受診される際には、何なりと遠慮なくご質問ください。「他の病院で手術を勧められたけど本当に必要ですか?」「他の病院の医師の意見も聞きたい」などのセカンドオピニオンも受け付けていますので、ぜひご相談ください。